人事管理システムのセキュリティ完全ガイド【リスク・対策機能・おすすめシステム5選】
更新日 2026年06月11日
人事管理システム(HCM)とは、従業員の基本情報(氏名・住所・雇用形態など)や人事異動・評価・スキル情報を管理できるシステムです。従業員の基本情報・給与・評価・マイナンバーといった機密データがまとまっているため、企業内でも セキュリティリスクが高くなっています。
本記事では人事管理システムに潜むセキュリティリスクと、選定時に確認すべきセキュリティ機能を解説し、セキュリティ水準の高いおすすめシステムを5選紹介します。最後にセキュリティ選定チェックリストも掲載しているので、ぜひ導入・乗り換えの参考にしてください。
人事管理システムには、氏名・住所・生年月日・給与・評価結果・マイナンバー・健康診断データなど、企業内で最もセンシティブな個人情報が集中しています。これらの情報は漏洩した際の影響範囲が広く、企業の信頼失墜や損害賠償リスクに直結します。

個人情報保護法の改正(2022年)により、漏洩件数が100件以上の場合は個人情報保護委員会への報告が義務付けられています。また、IPAの「情報セキュリティ10大脅威2024」でもランサムウェアや標的型攻撃が上位を占めており、人事システムも攻撃対象から例外ではありません。このような状況から人事管理システムのセキュリティ対策は重要視されているのです。
人事管理システムを狙うリスクは大きく3つに分類できます。それぞれの特徴を理解し、自社の状況と照らし合わせて対策を考えましょう。
最も多いのが、外部からの不正アクセス・ランサムウェア・フィッシングによる被害です。ランサムウェアはシステム内のデータを暗号化して金銭を要求するもので、人事システムの停止が業務全体に波及します。
フィッシングメールから人事担当者のアカウント情報が盗まれるケースも増えており、多要素認証(MFA)の未設定が被害を拡大させる一因になっています。
退職者のアカウントが削除されずに残っていたり、必要以上に広い権限が付与されていたりすることで、意図せず情報漏洩が起きるケースがあります。誤設定によりデータが外部公開状態になるヒューマンエラーも見過ごせません。
IPAの調査では内部不正による情報漏洩が全体の約30%を占めるとされており、アクセス権限管理と監査ログの整備が重要です。
クラウドサービスを利用する際は、システムベンダーやクラウド基盤(AWS・Azureなど)を経由した情報漏洩リスクも考慮が必要です。
ベンダーがセキュリティ事故を起こした際の通知・対応方針をSLA(サービスレベル合意書)で事前に確認しておきましょう。API連携先のシステムのセキュリティ水準も含めて、トータルで評価する視点が求められます。
ここでは、人事管理システムを選ぶ際に確認すべきセキュリティ機能を6つ解説します。「標準機能として提供されているか」「オプション追加が必要か」も合わせて確認してください。
システム選定時に確認すべき6つのセキュリティ機能
- データ暗号化
- アクセス制御・多要素認証(MFA)
- ログ管理・監査証跡
- 第三者認証の取得状況
- 脆弱性管理・定期診断
- 災害対策・データバックアップ
通信データはTLS1.2以上での暗号化が標準である必要があります。また、データベースに保存されるデータについても、AES-256などの強力な暗号化方式が採用されているかを確認しましょう。暗号化はセキュリティの基本中の基本ですが、「どの範囲のデータが暗号化されているか」はシステムによって異なります。
多要素認証(MFA)は、パスワード漏洩による不正アクセスを防ぐ最も有効な手段の一つです。MFAに加え、RBAC(ロールベースアクセス制御)により役職・部署ごとに閲覧・編集権限を細かく設定できるかを確認してください。IPアドレス制限(社外からのアクセスをブロックする機能)も、リモートワーク環境でのリスク軽減に有効です。
誰が・いつ・どのデータを・どう操作したかを記録する監査ログは、内部不正の抑止と事後対応の両方に欠かせません 。ログの保存期間(1年以上を推奨)と、定期的なログ確認をサポートするレポート機能があるかも確認しましょう。
ISO27001(ISMS認証)やISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)、SOC2といった第三者認証を取得しているベンダーは、継続的なセキュリティ管理が担保されています。特に官公庁・自治体・上場企業向けシステムではISMAPやISMS認証が事実上の選定要件になるケースもあります。
定期的なペネトレーションテストや脆弱性診断を実施しているか、セキュリティパッチの適用頻度を確認してください。重大な脆弱性発覚時の顧客への通知スピードや、対応方針の公開有無も判断材料になります。
自然災害や システム障害に備え、複数のデータセンターにデータをバックアップしているかを確認します。RPO(目標復旧時点)とRTO(目標復旧時間)の基準を明示しているベンダーは信頼性が高いといえます。
【比較一覧表】セキュリティが高い人事管理システム5選
以下に、セキュリティ機能が充実した人事管理システムを5つまとめました。第三者認証の取得状況も確認してください。
サービス名 | 主な認証 | セキュリティの特徴 | 対象規模 |
|---|
SmartHR | ISO27001・SOC2 Type2 | 暗号化・MFA・IP制限を標準提供 | 中小〜中堅 |
ジンジャー人事労務 | ISO27001・Pマーク | 全通信暗号化・1分ごと自動監視 | 中小〜中堅 |
カオナビ | ISMAP・Pマーク | 国内初ISMAP登録・詳細な権限設定 | 中堅〜大企業 |
HRBrain | ISO27001・Pマーク | 定期脆弱性診断・役職別権限制御 | 中小〜中堅 |
COMPANY | ISMAP・ISO27001/27017/27701 | 官公庁・金融機関採用の最高水準 | 大企業 |
セキュリティが高いおすすめの人事管理システムについて、各システムの特徴や強み、向いている企業などを解説します。
SmartHR
株式会社SmartHR
出典:SmartHR https://smarthr.jp/
無料プランあり
トライアルあり
IT導入補助金対象
上場企業導入実績あり
SmartHRは、株式会社SmartHRが提供するクラウド型の人事管理システムです。人事情報の一元管理から労務手続きの電子化まで幅広く対応しており、ISO27001認証やSOC2 Type2保証報告書を取得するなど、セキュリティ対策にも力を入れています。入退社手続きや電子申請のペーパーレス化を進めながら、安全に人事情報を管理したい企業に適したサービスです。
主な機能
- 組織サーベイ
- 提出依頼の通知
- 導入支援・運用支援あり
- 導入支援・運用支援あり
ジンジャー人 事労務
jinjer株式会社
出典:ジンジャー人事労務 https://hcm-jinjer.com/jinji/
ジンジャー人事労務は、jinjer株式会社が提供する人事労務システムです。人事・勤怠・給与・労務を1つのデータベースで管理できるほか、ISO27001やプライバシーマークを取得し、セキュリティ体制の強化にも取り組んでいます。人事関連業務を統合しながら、安全な運用環境を構築したい企業におすすめです。
主な機能
- 提出依頼の通知
- 導入支援・運用支援あり
- 電話サポートあり
- 導入支援・運用支援あり
カオナビ
株式会社カオナビ
出典:カオナビ https://www.kaonavi.jp/
カオナビは、株式会社カオナビが提供するタレントマネジメント機能を備えた人事管理システムです。社員情報や評価情報などの機密データを一元管理できるほか、国内初のISMAP登録タレントマネジメントシステムとして高いセキュリティ要件に対応しています。人材情報を安全に活用したい中堅・大企業に適したサービスです。
主な機能
- 簡易検索
- 電話サポートあり
- 明細配信・照会
- 電話サポートあり
HRBrain
株式会社HRBrain
出典:HRBrain https://www.hrbrain.jp/
トライアルあり
IT導入補助金対象
上場企業導入実績あり
HRBrainは、株式会社HRBrainが提供するクラウド型の人事管理システムです。人事評価や人材データベース機能を備えており、ISO27001やプライバシーマークの取得に加え、定期的な脆弱性診断を実施するなどセキュリティ強化にも取り組んでいます。人材データを安全に活用したい企業におすすめです。
主な機能
- 電話サポートあり
- 導入支援・運用支援あり
- 簡易検索
- 電話サポートあり
COMPANY
株式会社Works Human Intelligence
出典:COMPANY https://www.works-hi.co.jp/products/hcm
COMPANYは、株式会社Works Human Intelligenceが提供する大手企業向けの人事管理システムです。数千名から数十万名規模の従業員情報を管理できるほか、ISMAP登録やISO27001・ISO27017・ISO27701の取 得など、高度なセキュリティ要件に対応しています。官公庁や金融機関を含む大規模組織での導入実績も豊富です。
主な機能
- 導入支援・運用支援あり
- 残業手当の自動計算機能
- 導入支援・運用支援あり
- ICカード打刻
セキュリティ水準の高いシステムを選んでも、企業側の運用が伴わなければ意味がありません。以下の4点を継続的に実施してください。
人事管理システムの情報漏洩事故の多くは、退職者のアカウントが削除されていなかった、または権限が過剰に付与されていたことが原因です。退職者のアカウントは退職日当日に無効化することを社内ルールとして明文化しましょう。また、権限設定は「最小権限の原則」に基づき、業務上必要な情報だけにアクセスできるよう設計し、半年に1回以上の棚卸しを実施してください。
- 退職日当日にアカウントを無効化するフローを入退社手続きに組み込む
- 権限設定を半年に1回以上見直し、不要な権限・過剰な権限を削除する
- 特権アカウント(管理者権限)は必要最小限の担当者にのみ付与する
システムのセキュリティをいくら高めても、フィッシングメールへの誤クリックや安易なパスワード使い回しによって、アカウント情報が漏洩するリスクは排除できません。人事担当者は給与・評価データなど機密性の高い情報 を扱うため、特に標的型攻撃(業務を装ったメール)への注意が必要です。年1回以上のフィッシング訓練と、パスワード管理に関する研修を必ず実施しましょう。
- フィッシングメール訓練を年1回以上実施し、開封率・報告率を記録する
- パスワード管理研修を実施し、使い回しや単純パスワードのリスクを周知する
- MFAの設定方法と重要性を全担当者に周知徹底する
アクセスログや操作ログは、内部不正の抑止力になるとともに、万一インシデントが発生した際の原因特定にも欠かせません。ただし、ログを取得しているだけでは意味がなく、定期的に確認・分析する運用体制が必要です。「深夜のアクセス」「大量データのエクスポート」「普段と異なる端末からのログイン」などの不審なパターンを月1回以上確認してください。
- アクセスログ・操作ログを月1回以上確認し、不審なアクセスをモニタリングする
- 大量データエクスポートや深夜ログインなど通常と異なる操作をアラートで検知する設定を入れる
- ログの保存期間をシステム設定で確認し、少なくとも1年以上保管されるよう設定する
情報漏洩インシデントが発生した際、対応が後手に回ると被害が拡大し、行政への報告遅れが追加的なペナルティにつながることもあります。個人情報保護法では、一定規模以上の漏洩は72時間以内に個人情報保護委員会へ速報することが義務付けられています。「誰が・何を・どの順番で対応するか」を記載したインシデント対応マニュアルをあらかじめ作成し、年1回のシミュレーション訓練も実施しておきましょう。
- インシデント発生時の社内連絡ルート・対応担当者を明記したフローを整備する
- 個人情報保護委員会への報告義務(速報72時間以内)を担当者が把
人事管理システムを比較検討する際は、ベンダーのセールストーク頼みにならず、以下のチェックリストを使って客観的に評価することをおすすめします。特に「標準機能として提供されているか」「オプション費用が別途かかるか」を明確にしておくことが重要です。
確認カテゴリ | 確認項目 | 確認ポイント |
|---|
暗号化 | TLS1.2以上の通信暗号化・AES-256等の保存データ暗号化 | 通信だけでなく「保存データ」の暗号化も必須 |
多要素認証(MFA) | MFAが標準機能として提供されているか | オプション扱いのシステムは要注意 |
IPアドレス制限 | 社外ネットワークからのアクセスをIPで制限できるか | リモートワーク環境では特に重要 |
ロールベース制御(RBAC) | 役職・部署ごとに閲覧・編集権限を細かく設定できるか | 「見せてはいけない情報」を制御できるか確認 |
ログ管理 | アクセスログ・操作ログが取得・保管されるか | 保存期間(1年以上推奨)と閲覧UIも確認 |
第三者認証 | ISO27001・Pマーク・ISMAP・SOC2等の認証取得状況 | 官公庁・上場企業ではISMAPが求められるケースも |
脆弱性診断 | 定期的なペネトレーションテストを実施しているか | 実施頻度と結果の開示状況を確認 |
バックアップ | 複数拠点へのバックアップ・RPO/RTOの基準を明示しているか | 災害時の復旧目標時間が明確かを確認 |
インシデント対応 | セキュリティ事故時の顧客通知・対応フローが明確か | SLAに通知時間の定めがあるか確認 |
サポート体制 | セキュリティ設定の初期構築サポートや相談窓口があるか | 設定だけでなく「相談できる窓口」の有無も重要 |
自社のセキュリティ要件(社員数・業種・取り扱うデータの機密性)に合わせて、特に重視する項目を3〜4つ絞り込んでから評価することをおすすめします。
人事管理システムのセキュリティを評価するには、ベンダー側の技術対策(暗号化・MFA・第三者認証)と企業側の運用管理(権限設定・ログ監査・教育)の両方が必要です。まず第三者認証の取得状況を確認し、次にMFA・アクセス制御・ログ管理が標準で揃っているかをチェックしましょう。
セキュリティは後から追加しにくい要素であるため、初期の選定段階で十分な確認をすることが重要です。まずは各社に資料請求し、セキュリティ要件を明示したうえで比較することをおすすめします。
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