人事部向け|ATS(採用管理システム)おすすめ5選+失敗しない導入ガイド
更新日 2025年07月01日
はじめに:採用管理システム(ATS)導入が標準化する時代背景
採用活動を取り巻く環境はここ数年で大きく変化しています。企業の人材獲得競争が激化し、採用業務の効率化や情報管理の厳格化が経営上の重要テーマとなりました。
実際、HRTechクラウド市場における採用管理システム分野は、2023年度時点で、すでに前年比134%増の1,077億円規模となる急成長を遂げていました。これは、採用効率の向上と働き方改革への対応が企業にとって急務であることの強い裏付けとなっています。
出典:デロイトトーマツ HRTechクラウド市場の実態と展望 2024年度版
こうした動向を受け、かつては一部の大企業 のみが利用していたATSも、今では中小企業やスタートアップにまで広がっています。クラウド型サービスの台頭や低コスト化、無料トライアル期間の充実など、導入ハードルは大きく下がりました。結果として、IT初級者や採用管理が初めての担当者でも運用しやすい環境が整いつつあります。
本記事では、人事担当者の方に向けて、最新トレンドを踏まえた選定ポイントや導入・運用時の注意点、おすすめATS、現場での「あるある」なギャップとその対策までを丁寧に解説します。自社に合ったATS選びの一助として、ぜひご覧ください。
採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)とは、企業の採用活動において発生する一連の業務――求人作成、応募受付、書類選考、面接調整、合否連絡、内定手続きなど――を一元管理・自動化できるソフトウェアの総称です。
従来、多くの企業ではExcelやメール、紙ベースで採用進捗を管理していました。しかし応募経路の多様化や、個人情報管理体制の強化(※個人情報保護法2022年改正)などに伴い、情報の分散やヒューマンエラー、進捗管理の属人化など、さまざまな課題が顕在化してきました。
ATSの導入により、以下のような業務改善が可能となります。
- 複数の求人媒体(例:リクナビ、マイナビ、ビズリーチ等)からの応募データの自動集約
- 応募者の進捗ステータスを一覧化し、選考漏れや対応遅れを防止
- 面接官ごとにスケジュールを自動調整・リマインド
- メールテンプレートによる一斉連絡、履歴管理
- 採用活動の実績データ集計やレポーティングの自動化
このように、ATSは「情報管理」「業務効率化」「データ活用」の三拍子を同時に実現するツールとして、現代の採用現場で広く使われています。
2020年代に入り、クラウド型ATSが主流となりました。Webブラウザとインターネット接続環境さえあれば、場所を問わず利用できるため、リモートワークや多拠点管理にも柔軟に対応可能です。近年は、無料プランやトライアルの充実、モバイル対応の進化も著しいです。AIによる候補者評価機能や、労務システム・勤怠管理とのAPI連携など、機能面の 高度化も進んでいます。
採用管理システム(ATS)は、これまで人事担当者が「何度も同じことを繰り返し入力していた」「うっかり見落としが発生していた」といった事務作業の負担を劇的に減らしてくれるツールです。特に複数媒体からの応募や、関係者が多い面接調整など、“人手だけでは追い付かない”場面で力を発揮します。
たとえば、求人サイトや自社採用ページから毎日届く応募者データを一つ一つ手作業でまとめていた時代、Excelの転記ミスや情報漏れ、進捗状況のズレがどうしても起こりがちでした。ATSを導入すれば、こうした情報の自動集約ができ、面接設定や合否連絡もシステム上で一元化できます。
さらに、応募数や通過率などのデータも自動的に集計・可視化されるため、経営層への報告や採用活動の振り返りも格段にスピードアップします。
一方で、「システムを導入したからといって、すべての作業が自動化できる」というわけではありません。
たとえば、求人票の内容をどう魅力的に見せるか、候補者と個別にやり取りする際の言葉選び、面接での見極め、現場とのすり合わせや入社後フォローなど、人ならではの判断や温度感が必要な仕事は必ず残ります。また、社内独自のフローや細かなルールについても、システムにそのまま落とし込むことが難しい場合もあります。
ここで、ATSで“できること”と“できないこと”を、実際の現場イメージを交えて整理します。
- 求人媒体や自社HPからの応募情報を自動で一元管理
- 各候補者の進捗状況(書類選考中・面接待ち・内定など)をリアルタイムで可視化
- 面接の日程調整やリマインドメールの自動送信
- 書類選考結果や合否連絡など、メールの一括送信や履歴管理
- 採用活動のデータ(応募数、通過率、媒体ごとの効果など)の自動集計とグラフ化
- 候補者の人柄 や職場に合うかどうかの最終判断
- 求人票やオファーメッセージを自社の魅力が伝わるようにアレンジすること
- 面接での細かなやり取りや現場社員との連携・フォロー
- 個人情報保護法などの法令遵守を徹底したうえで、自社ルールに沿った判断・対応
特に「今までは全て手作業で何とかなっていたけれど、応募数が増えたことで確認漏れや連絡ミスが多発した」「複数人で採用を回すようになり、情報共有に時間がかかる」といった場面では、ATS導入の効果をすぐに実感しやすいです。
一方で、システムができる範囲と、最終的に“人の目・人の手”でやるべき仕事をきちんと見極めておかないと、「思っていたほど楽にならなかった」「逆に使い方が分からず混乱した」という声も出やすくなります。
だからこそ、ATSの導入時には、どの業務をシステムに任せて、どの工程は人事・現場が主導するかを最初に整理しておくことが、満足度の高い運用につながります。
多数の採用管理システムが市場に出回る中、どのサービスを選ぶべきか迷う担当者は少なくありません。失敗を避けるためには、自社の採用スタイルや課題に合致する機能・サービスを見極める必要があります。以下の観点で比較・選定を行うことを推奨します。
新卒採用・中途採用・アルバイト採用では、必要となる機能や重視ポイントが異なります。 新卒採用向けにはエントリーシート管理や学校別管理、インターンシップ対応機能が求められるケースが多く、中途採用では求人媒体連携や職種ごとの応募者進捗管理が重要となります。アルバイト採用では短期大量応募への対応力や、現場責任者との共有機能が重視されます。
まとめると、採用タイプ別に重視される機能は以下のとおりです。
- 新卒採用:エントリーシート管理、学校別応募者管理、インターンシップ対応
- 中途採用:求人媒体連携、職種別の応募者進捗管理
- アルバイト採用:短期大量応募対応、現場責任者との情報共有機能
このように自社の採用スタイルや課題に合わせて、重視すべき機能を整理したうえでサービス選定を進めることが、失敗しない導入につながります。
採用活動で煩雑になりがちなのが、面接日程調整や応募者への連絡です。カレンダー連携や自動リマインド、LINEやSMSといった多様な連絡手段をサポートするシステムを選ぶことで、担当者の業務負担を大幅に削減できます。
また、外部の人事労務システムやチャットツール(Slack、Teams等)との連携も、情報の一元化・見える化に役立ちます。
自社の採用規模や体制を整理しないまま選定を進めてしまう
現場では「高機能なシステムほど良い」と考え、複雑なATSを選んでしまうことがよくあります。しかし、実際には年間の応募数が100名未満であればシンプルな機能で十分なケースも多く、複雑な設定や権限管理は使いこなせなくなるリスクもあります。
まずは「どの業務に一番手間がかかっているのか」「どこを一番効率化したいのか」を、現場担当者同士で具体的に話し合い、紙やホワイトボードなどで採用フローを書き出してみることが重要です。
「月額◯円」といった表記だけで選定してしまい、実際は応募者数やユーザー数、連携できる求人媒体の数などに制限があり、想定外の追加料金が発生することが少なくありません。無料プランやお試し期間中に、どこまでの機能が使えるのかを細かく検証し、運用に必要な要素が料金内に含まれているかどうかを必ず確認しておく必要があります。
導入初期には操作や設定で戸惑うことが多くなりがちです。ベンダーのサポート体制が不十分だと、「トラブル時に誰にも相談できない」「解決までに時間がかかる」といった事態になりやすくなります。問い合わせ窓口の有無や対応スピード、FAQや操作マニュアルの内容まで事前にチェックし、必要なら実際に問い合わせてみることをおすすめします。
人事部に本当におすすめなATS(採用管理システム)5選
ジョブカン採用管理
株式会社DONUTS
出典:ジョブカン採用管理 https://ats.jobcan.ne.jp/
「ジョブカン採用管理」は、特に中小企業や採用専任者が少ない会社で導入実績が多く、使い始めのハードルが非常に低いことが特徴です。初めてATSを使う担当者でも直感的に操作しやすいインターフェースになっており、応募者データの一元管理や面接日程の自動調整、メールのテンプレート送信など、採用現場で“手間がかかる部分”をしっかりカバーしています。
また、無料トライアルが用意されているため、実際の自社業務フローの中で本当に使いこなせるかどうかを試すことができます。何か困った時も、電話やチャットでのサポートが充実しており、ITに不慣れな担当者でも安心して導入できる点が強みです。
主な機能
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
- クラウド(SaaS)
ハーモス採用
株式会社ビズリーチ
出典:ハーモス採用 https://hrmos.co/
「HRMOS採用(ハーモス採用)」は、ビズリーチグループが提供するクラウド型ATSで、シンプルな操作性とともに、レポートや分析機能が充実している点が評価されています。応募者情報の一元管理はもちろん、選考フローごとの進捗を“誰でもひと目で”把握できる画面設計となっており、複数人で採用業務を分担する際も役割分担や権限設定が簡単に行えます。
求人媒体連携やメール自動化などの機能も幅広くサポートしているため、急に応募数が増えても運用が崩れにくい設計です。導入から定着までの手厚いサポートも整っており、ITリテラシーに不安がある現場でも導入がスムーズに進みやすいサービスです。
主な機能
- 導入支援・運用支援あり
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
HITO-Link リクルーティング
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
出典:HITO-Link リクルーティング https://www.hito-link.jp/recruiting/
「HITO-Linkリクルーティング」は、採用担当者の視点で“現場の困りごと”に寄り添った設計が特徴です。特に中途採用や複数職種の同時募集が多い企業に向いており、各求人媒体との連携や面接日程の自動調整、応募者の進捗管理までワンストップで完結できます。選考状況や担当者のコメントもシステム内で一元化されるため、複数人での情報共有がスムーズになり、「誰がどの応募者に対応中か分からなくなる」といった現場の混乱を防げます。
また、操作画面やマニュアルが分かりやすくまとめられているので、ITに不慣れな担当者や新しく採用業務を任された社員でも、短期間で業務に慣れることができます。サポート体制も柔軟で、現場での疑問や困りごとに迅速に対応してくれるため、安心して導入できるATSです。
主な機能
- 導入支援・運用支援あり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
- クラウド(SaaS)
Talentio
株式会社タレンティオ
出典:Talentio https://www.talentio.co.jp/hire
「Talentio」は、シンプルな画面設計と分かりやすい操作感で、中小規模の企業やスタートアップからの支持が高いサービスです。応募者管理や選考フローの可視化はもちろん、進捗のフィルタリングやタスク管理、面接調整など、実際に現場で起こりがちな“行き違い”や“抜け漏れ”を防ぐ工夫が随所に盛り込まれています。
特に採用活動が属人的になりやすい小規模チームでは、システムによる情報の一元化が“現場の混乱”を減らす効果を発揮します。また、比較的リーズナブルな価格帯で始められるため、「とにかくまずは使ってみたい」「現場の様子を見ながら本格導入したい」という場合にもフィットしやすいサービスです。
主な機能
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- クラウド(SaaS)
- ISMS
どのサービスも、ITに苦手意識がある方や初めてATSを導入する現場で「操作が難しくて定着しない」「情報共有がうまくいかない」といった“よくあるつまずき”を防げるよう設計されています。
まずは無料トライアルやお試し期間を活用し、実際の採用フローに沿ってテスト運用してみることをおすすめします。自社に本当に合ったサービスかどうかは、現場の声を反映しながら慎重に選定すると失敗のリスクを最小限に抑えられます。
ATSを実際に導入した後、現場から「思っていたのと違った」「こんなトラブルが起きるとは」という声が上がることがあります。多くの企業が経験する“想定外”のギャップと、その乗り越え方について解説します。
直感的に使いづらい
ITに不慣れな担当者から「操作が分かりにくい」「どこを 押せばいいのか迷う」といった声が出ることがあります。こうした場合、無料トライアル期間中に複数名で実際の採用フローを試し、現場担当者のフィードバックを必ず集めることが大切です。
マニュアルが読まれない・属人化する
システム導入後、初期担当者しか使いこなせない状態になることも珍しくありません。運用マニュアルを簡潔にまとめ、異動や退職が発生しても引き継ぎしやすい体制を整えましょう。
導入後にありがちな“想定外トラブル”と乗り越えるヒント
ATSを導入しても、入力が面倒という理由で現場担当者がExcelや紙に個別メモを残してしまい、二重管理が起きてしまうケースが少なくありません。これにより、情報の抜けや重複対応といったトラブルが発生しやすくなります。全員が同じルールでATSに入力することを徹底し、なぜExcelなどを併用したくなるのか現場の理由をヒアリングして運用ルールやシステム設定を見直すことが大切です。
操作説明やマニュアル整備が後回しになり、担当者ごとに入力方法や進捗管理の仕方が異なり「誰が何をやっているのかわからない」状況になることもよくあります。導入初期から全担当者を集めて実演会を実施し、簡単な操作マニュアルやQ&Aリストを作成しておくことで、共通認識を持ちやすくなります。動画マニュアルなども有効です。
システムを導入したことで安心しきってしまい、通知設定やステータス更新を忘れることで応募者への連絡が抜け落ちたり、同じ内容を二重に送ってしまうことがあります。ATSの自動リマインドやアラート機能を活用し、週次で進捗を全員で確認する運用フローを作ると、こうしたミスを防げます。
担当者が急な異動や退職をした際に、パスワードや操作方法がわからず採用業務がストップしてしまうことがあります。パスワードやマニュアルを社内の共有フォルダやクラウドで管理し、複数の担当者がいつでもアクセスできる仕組みを作っておくことがリスク回避につながります。
運用を始めてから管理したい応募者数や担当者数が増えたり、連携する求人媒体が追加となった場合、追加料金が発生して年間予算をオーバーしてしまうことがあります。月額費用やオプションの料金体系を事前に細かく確認し、今後の利用拡大も見据えてベンダーに見積もりを依頼しておくことが重要です。
これらの“想定外”に直面した場合、ベンダーサポートへの早期相談や、社内勉強会の開催が乗り越え方として効果的です。「困ったときに誰に相談すればよいか」を事前に周知しておくことも重要なポイントです。
ATSを単に導入するだけでなく、現場に定着させ業務効率化の成果を最大化するには、いくつかの段階的なアプローチが必要です。
最初のステップは、自社の採用業務フローを紙やチャートに書き出し、「どこに一番時間や手間がかかっているか」「どの業務が属人的になっているか」を棚卸しすることです。必要な機能と「できれば欲しい」機能をリスト化し、優先順位を明確にしておくことで、ATS選定のミスマッチを防げます。
多くのATSが無料トライアルや無料プランを用意しています。この期間を活用して、実際の選考フローや応募対応を複数名でシミュレーションすることが重要です。初期設定や媒体連携、応募データの取り込みなど、実運用に近い形でテストし、現場からの課題や要望を洗い出しましょう。
本格導入後も、業務が定着するまで定期的な振り返りが欠かせません。活用状況やトラブル、追加要望を共有し、必要に応じて運用ルールやマニュアルを見直します。
また、ATSの導入効果を「応募数」「通過率」「内定率」「業務工数削減」など、数値で定点観測(KPI:重要業績評価指標)し、成果と課題を明確にしていくことも重要です。
採用管理システム(ATS)の導入は、今や中堅・中小企業でも標準的な業務改善手段となっています。定型作業の自動化による効率化はもちろん、情報の一元化や応募者対応の品質向上、法令順守といった点でも高い効果が期待できます。ただし、システムにはできること・できないことがあるため、現場の課題や業務フローをしっかり見極めることが成功のカギとなります。
比較・選定時には、採用タイプや必要機能、サポート体制、無料プランの内容などを総合的に評価し、まずは無料トライアルで運用体験してみることをおすすめします。導入後の“想定外”にもしっかり備え、現場の声を活かした運用体制を構築しましょう。
今後の採用活動のさらなる効率化と最適化のために、本記事の内容が貴社のATS選び・活用の一助となれば幸いです。ぜひ、実際に各サービスの公式情報も参照しながら、最適な選択を進めてください。
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